未来を変えたい。歴史を変えたい。「君の名残を」
皆さんこんばんは!
今日は源平合戦にフォーカスした
歴史+SF小説を紹介いたします。
その名も
「君の名残を」
この小説は、現代から平安時代にタイムスリップした
3人の若者の物語です。
歴史の波に揉まれながらも懸命に生きた彼ら。
その軌跡を辿っていきましょう。
1. 「君の名残を」あらすじ
作者:浅倉卓弥
刊行日:2004年6月15日
浅倉先生は「四日間の奇蹟」で「このミス」大賞を受賞した作家です。
その作品をも超えたのが、「君の名残を」です。
現代から平安時代にタイムスリップした
白石友恵、原口武蔵、北村四郎。
友恵と武蔵は同じ高校に通う同級生。
四郎は友恵の親友の弟です。
友恵と四郎は剣道部に所属していることもあり
剣術の腕前は相当なものでありました。
この3人は、雷に打たれたことで
平安時代にタイムスリップしてしまいます。
3人が目覚めた先はバラバラでしたが
歴史上の重要人物としての道を歩み始めます。
2. 白石友恵の役目
※ここから盛大なネタバレを含みます!
本の中身が気になる方はご注意ください。
白石友恵が目覚めると、そこは森の中でした。
途方にくれていた友恵を助けたのは
駒王丸と名乗る少年でした。
彼こそ、のちに「倶利伽羅峠の戦い」で名を轟かせ
まだ剣術が苦手だった駒王丸を
友恵が鍛え上げ、立派な武士へと成長していきます。
友恵は「巴(ともえ)」と呼ばれ
いつしか義仲のそばにいることが当たり前となり
巴御前として生涯の伴侶となったのです。
ここまではほぼ史実通りとなります。
小説のオリジナルエピソードは
巴御前と交わるはずのなかった
ある人物の存在です。
義経に追われる身となった義仲を守るために
戦地に赴いた巴御前。
現代からきた友恵だからこそ
義仲の最期はすでに知っていました。
愛する夫を守るために
運命を変えようと必死にもがく、
そんな彼女の背中を押したのが
3. 原口武蔵の役割
友恵同様、剣術を得意とする原口武蔵は
身寄りのない子どもたちを保護する
お寺で暮らしていました。
自分を拾ってくれた和尚様と
ともに生活する幼い子たちを
まるで家族のように思っていました。
しかし時は源平合戦真っ只中。
ひどく荒れ果てた世の中で
この寺は無残な殺戮の標的にされてしまいます。
和尚様も子どもたちも目の前で皆殺しにされ、
唯一生き残った幼い女の子も奪われてしまいます。
自分の非力と世の中を憎んだ武蔵は
その目に狂気を宿し、町を彷徨います。
そこで出会ったのが、源義経でした。
武蔵の剣の腕を見込んでそばにおき、武蔵は弁慶の名をもらい
義経の右腕として生きていきます。
弁慶の最期は「立ち往生」だったと伝えられています。
義経を守り、全身に矢を受けて死んでいった弁慶。
武蔵が自分の命をかけて守ったものは、
義経か、それとも歴史を変えたのでしょうか?
4. 北村四郎の役割
北村四郎は、実は変わった経歴の持ち主です。
現代からタイムスリップした彼ですが
生まれはなんと
平安時代の日本なのです。
幼い頃に平安から昭和末期にタイムスリップし、
現代で十数年過ごしたあと、また元の時代に戻ってきたのです。
つまり四郎は、のちに鎌倉幕府で
第2執権の役職を担うことになるのです。
驚きですよね。彼は北条氏の立場から
源家を支える重要な役割を担います。
5. 「君の名残」見どころ
現代からタイムスリップした3人の役割を見てきました。
すでに史実を知っている彼らが
平安時代に飛ばされた理由は
「歴史の流れを正すこと」だったと言われています。
愛する夫が死ぬ運命を変えたいと
命をかけて戦場に舞い降りた巴御前。
史実として伝えられた「立ち往生」に怯えながらも
自らの役割を認識し、源家を支えた北条泰時。
彼らが歩んだ道は、決して楽ではありませんでした。
歴史の流れはそう簡単には変えられない。
史実どおりに進む時を食い止めたくても止められない。
己の非力さを呪いながら、それでも明日をあきらめない
彼らの生き様こそ、この小説の見どころです。
タイムスリップ物は、だいたい最後は現代に戻ってきます。
しかし3人は現代に戻ることなく、生涯を終えました。
その生涯は彼らにとって満足のいくものだったかはわかりません。
しかし少なくとも巴御前と弁慶は
最期に笑っていたと伝えられています。
歴史物を連続で紹介しましたので
次はタイムスリップからSF系の小説を紹介することにしましょう!
誰もが知っているあのアニメ映画の原作です。
お楽しみに!