本、読んでみない?

紙の本をこよなく愛する読書マニアによる読書のススメ!本、読んでみない?

星降る夜の分かれ道。「銀河鉄道の夜」

皆さんこんばんは!

随分お久しぶりですね。

しばらく更新しておりませんでしたが・・・

せっかくの年末なので、この時期にぴったりな本を紹介します!

 

 大晦日の夜、除夜の鐘を聞きながら

神社にお参りに行かれる方も多いと思います。

 

その時、ふと空を見上げてみてください。

そこにはきっと

冬の空を彩るオリオン座が目に留まると思います。

その奥には、東京の空では見えませんが

光の奥に隠された銀河があります。

 

銀河をかける列車。

ジョバンニとカンパネルラの旅は

銀河鉄道とともに始まります。

 

宮沢賢治代表作

銀河鉄道の夜

 

 

1. 宮沢賢治の紹介

 

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https://www.amazon.co.jp/銀河鉄道の夜-宮沢-賢治/dp/4898152783

宮沢賢治という小説家をご存知でしょうか?

日本人なら誰で

一度はその名を聞いたことがあると思います。

 

宮沢賢治(1896-1933)

岩手県花巻生まれ。盛岡高等農林学校を卒業しています。

文化人が農林学校卒ということに若干の違和感がありますね。

しかし農業を通して岩手県の農民の現実を知り

農民の生活向上に向けたれ活動した経験

彼の文学の礎となったと言われています。

 

また、身体の弱かった幼少期にった日蓮宗の教えから

人のために生きることの尊さと生きがい知り、

自分が生まれた意味を見出すことができたそうです。

教師となった宮沢賢治

子どもたちに「人のために生きること」の大切さを

伝えたいと思い、童話という形で物語を執筆します。

 

生前、宮沢賢治が発表した作品は2作しかなく

現代で評価されたものはほとんどが生後に発表されました。

今回紹介する「銀河鉄道の夜」もそのひとつですが

彼が伝えたかった大切なことが

しっかり刻まれた作品となっています。

 

今年の最後に読む本として

そっとページをめくってみませんか?

 

 

2. 「銀河鉄道の夜」あらすじ

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物語の主人公、ジョバンニ

孤独を抱えた少年でした。

病気の母と、家族を養うために漁出てほどんど家に帰らない父。

心の拠り所は幼馴染のカムパネルラのみでした。

 

ジョバンニの身の上は、学校でいじめを受けるには十分な理由で

特にクラスメイトのザネリは

いつもことあるごとにジョバンニをからかっていました。

 

いじめられっ子で孤独なジョバンニが

銀河鉄道に乗り込んだのは

星祭の日の夜でした。

 

牛乳配達を終えて広場に戻ると

そこにはカムパネルラの姿が。

話しかけようした矢先に

いつものようにザネリ達が

ジョバンニをからかってきたのです。

いてもたってもいられなくなったジョバンニは

誰もない丘へ逃げ、夜空を見上げるように寝転びました。

 

「銀河ステーション、銀河ステーション」

 

その声が聞こえた時

ジョバンニは銀河鉄道に乗り込み

サザンクロスまでの旅に出たのでした。

 

 

3. 描かれた「生」と「死」

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ジョバンニが乗り込んだ銀河鉄道には

なぜかびしょ濡れのカムパネルラも乗っていました。

 

親友がいることに喜びを隠せないジョバンニと

静かに銀河鉄道に揺られるカムパネルラ。

 

ふたりを乗せた銀河鉄道

白鳥座から南十字座までを静かに走っていくのでした。

 

停車駅で出会う人々は、

発掘現場で働く大学士や鳥取り、サソリの話をする少女など

様々な人が乗り降りします。

 

彼らとの交流を通して

孤独を抱えた少年は、「生」について考え

自分が生まれた意味「生きがい」を見つけていきます。

 

一方でカムパネルラは、物語の後半で懺悔を始めるのです。

今はもういない、母に対して。

 

カムパネルラは

ジョバンニをいじめるザネリが川へ落ちそうになったところを

身を呈して救ったことで、銀河鉄道の乗客になりました。

 

命を落としたことが果たして正しかったのか。

母の思う「人のために生きる」ことに当てはまっていたのか

カムパネルラは自分の生き方に自信がもてなかったのです。

 

懺悔の念を抱えたカムパネルラは

それでも銀河鉄道の旅を通じて、

天上の母の姿に合間見えることができました。

それはまるで母が

自分を天上へ迎えてくれているかのようでした。

初めて自分の生き様に自信が持てたカムパネルラは

ジョバンニが気づかない間に

銀河鉄道から姿を消していました。

 

 

人のために生きようと心に決めたジョバンニと

人のために生きたことに満足して死んだ命カムパネルラ。

 

 銀河鉄道を通して

宮沢賢治が伝えたかったことは

まさに彼が生きる理由「人のために生きることの大切さ」でした。

 

銀河鉄道を降りて

現実に戻ったジョバンニは

カムパネルラがもういないことに気づくでしょう。

 

孤独を抱えた少年が

それでも人のために生きようする。

 

その人生がどのようなものになるのかは

読者の想像にお任せすることになります。

 

きっとジョバンニは

もう己の不幸を嘆くことをやめ

目の前の人のために

何かしようと必死になれる

そんな素敵な人になっていると信じて

今日はここまでにしましょう。

 

2020年、どのような未来が訪れるかはまだわかりませんが

宮沢賢治の教えを知った今

少しでも他者に、世界に優しくあれるような

そんな毎日を送れますように。

 

銀河鉄道の夜

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銀河鉄道の夜

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銀河鉄道の夜 (角川文庫)

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